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猫と戯れる

猫と戯れる

こんにちは。
今回は「猫と戯(たわむ)れる(洋題:My Momentary Lover)」というやや長編のエントリです。
いつの間にやらすっかり年の瀬。キーを打つ手もかじかむ今日この頃ですが、そんなこととは関係なしに、2年前の春に撮影した写真を元に、ちょっぴり切ないショートストーリーをお送りします。
そう、それは穏やかな日差しに包まれた春の午後。
満開の桜に導かれ、ふらりと公園に立ち寄ると、一匹の猫が寄ってきました。
猫と戯れる01にゃー。
猫と戯れる02
すりすり。
おお、よしよし。
猫は、陽を浴びて温もった柔らかな体を、左のふくらはぎあたりに押し付けながら後ろへと回ると、やおら振り返り、うっとりした表情を見せながら、今度は後ろから前へと、私の脚を優しく撫でるのでした。
猫と戯れる03
ころり。
(※たばこのポイ捨てはやめましょう)
猫と戯れる04
にゃー。
猫は私の足元に寝転んで、“ねころりころり”(※寝返りを繰り返すような猫の媚びる仕草。荒木経惟氏が命名したといわれる)を始めました。
砂汚れもいとわずに繰り返されるしなやかかつ大胆な肢体のうごめきは、胸の鼓動を早まらせ、うらはらに目は瞬きを忘れ、彼猫を見つめ続けるのでした。
そして私は、そのあからさまな色仕掛けに、恥ずかしながら、抗うこともできず、とうとう恋に堕ちたのでした。
猫と戯れる
……。
猫と戯れる06
ころり。
にゃあー。
「にゃあ」なんと甘美な響きでしょう。
猫と戯れる07
そのときです。
猫は突然、どこか一点に神経を集中させるような真剣そうな表情を見せ、頭をもたげました。
猫と戯れる08
「こっち…!」
もはや彼猫の瞳の中に、私の姿はありませんでした。
猫と戯れる09
猫は、新たな標的から目と耳を逸らさぬまま素早く身を起こすと、そちらを凝視し、接近の機会を伺っておりました。
猫と戯れる10
すたすた。
獲物たりうると確信したのでしょう。彼猫は振り返りもせず、ゆっくりと、私の許を去ってゆきました。
猫と戯れる11
その行く手には、満開の桜の下、サラリーマン風の男性がベンチに腰掛けており、今まさに弁当を食べようとしているところでした。
私は、後姿を見送りながら、「さよなら。楽しかったよ。元気でね…」と醒めた調子を装いながら、小さくつぶやきました。左のこむらには、彼猫の温もりがいつまでも優しく残っておりました。
(※たばこ、空き缶、紙くずのポイ捨てはやめましょう)
おしまい

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