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不死鳥の雲

不死鳥の雲

【写真: 不死鳥の雲(2012)】

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9月の、まだ暑さの残る―いや、むしろ今こそが盛夏だと言わんばかりの厳しい日差しの中を歩いていた。もうすぐお家だから、ね、と自分に言い聞かせ、冷菓への誘惑と戦っていた。そしてその一方で太陽に照らされて眩しい白と紫灰色の影を見せる雲をありがたそうにしばしば仰ぎ、目に染みる光はアスファルトに視線を戻すと同時に胸の奥からため息を押し出すのだった。

上空に何やら巨大な存在を感じて驚いた。見上げるとそこには、視界の半分ほども覆うような巨大な不死鳥が優雅に羽を広げていた。突然の出来事に、じりじり灼かれてすでに朦朧としていた脳はとろとろと溶け出して垂れ落ち、道にぽたぽたと黒い染みを作った。

それを目ざとく見つけた蟻どもは、私がよろよろと歩いた跡に連なる狼狽の痕跡を熱心に舐めとってゆく。いつしかそれらもぼやけてかすみ、街並みと混ざってどろりと排水溝に流れ落ちた。最後に目を凝らすと、不死鳥は既に上空を通り過ぎ、その長い尾がきらきらと輝きながら美しくたなびくのが見えた。

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